内科医花芝の健康小話

ちょっと健康に役立つことをお話します。

胃カメラ検査(上部消化管内視鏡)について解説します。

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胃カメラって何?

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は様々な理由で行われています。

・健康診断で

・胃バリウムでの異常指摘後の精密検査の為に

・胃部不快感の原因を調べるために

花芝は健診でも胃カメラの検査をお勧めしているのですが、胃カメラに何となく怖い印象を抱いている方も多いと思います。

胃カメラは凄く苦しいって聞いたことがあるし、受けたくないです。

麻酔で寝ている状態でも出来ると聞いたのですが。

 今日は胃カメラについて、具体的に解説していきます。

知識が増えれば怖くなくなるかもしれませんよ!

 胃カメラとは

 

 胃カメラ検査では、黒くて長いホースのようなカメラを、口または鼻から胃の方へと挿入していきます。

カメラの直径は、経口内視鏡(口から)で10-7mm。

経鼻内視鏡(鼻から)で5-6mmです。

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胃カメラとは、上部消化管内視鏡検査のことです。

上部消化管とは食道・胃・十二指腸を指します。

内視鏡とは、人体の内部を見る為のカメラのことです。

つまり胃カメラは、口から細長いホースのようなカメラを挿入し、食道・胃・十二指腸の粘膜を観察する検査のことです。

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ちなみに口から食道までの通り道である喉も観察できます。

しかし、胃カメラで一番苦しいのは喉を通るときなのです。

だから喉の辺りを直径10mmくらいあるカメラがうろうろしていると、とてもしんどいです。

喉の詳細観察は、耳鼻科での経鼻内視鏡検査がお勧めです。

胃まで挿入する必要のないカメラなので、直径はかなり細く3㎜程度です。

胃カメラのスケジュール 

では、具体的なスケジュールを見てみましょう。

ここでは一般的な傾向内視鏡検査についてご説明します。

①前日

胃カメラでは胃の内部を観察するので、胃を空っぽにする必要があります。

そのため、前日の21時以降は食事をとるのは止めましょう。

水・お茶・スポーツドリンクなどの摂取は構いません。

脱水になってはいけないので、水分はきちんととりましょう。

※上記以外の水分(牛乳・スープなど)は、胃に残りやすい場合もあり避けた方が無難だと思います。

②当日(朝)

水分は朝7時以降は止めておきましょう。

検査中、水分が胃に沢山あると気持ち悪くなることがあります。

定期の内服薬がある場合、基本的には朝のお水と一緒に内服して構いません。

ただし、出来るだけかかりつけの先生の指示を仰ぎましょう。

特に糖尿病のお薬などは、注意が必要です。

(絶食状態でお薬を飲むと、血糖が下がり過ぎることがあるからです)

③当日(検査前)

・まず、ガスコン水というシロップ状の白い液体を内服します。

これは消泡剤というもので、胃や腸のガスを排出し、胃カメラでの観察を助ける作用があります。

・次にのどの麻酔を行います。カメラ通過時の苦痛を和らげるものです。

麻酔と言っても、怖いことはおこないません。

麻酔薬の入ったスプレーを喉に数回振りかける方法が一般的です。

具体的には喉に5回程度スプレーを吹きかけ、30秒我慢してから飲み込みます。

鎮痙剤の投与が行われる場合もあります。

これは、消化管の蠕動(うごき)や消化液の分泌をおさえて、胃カメラの観察を助ける作用があります。

ブスコパンの筋肉注射、グルカゴンの筋肉注射を使用することが多いです。

ただし、それぞれ禁忌(使ってはいけない病気)があります。

ブスコパンの禁忌は出血性大腸炎、緑内障、前立腺肥大、重篤な心疾患、麻痺性イレウスと、意外と多いです。

グルカゴンの禁忌は、褐色細胞腫で、こちらは稀です。

また、どちらの薬も使用後は、当日の車の運転などは控えましょう。

④当日(検査本番!)

いよいよ本番です。検査室に移動して、左を下にしてベッドに横になります。

マウスピースを咥えれば準備完了です。

あとは胃カメラが挿入され、検査開始となります。

検査中はできるだけリラックスするように心がけましょう。

検査中は目を開けている方が実は楽ですよ。

⑤当日(検査後)

検査後、喉麻酔が効いている内は飲食できません。

理由はむせてしまうからです。

また、組織の検査などを行った方も暫くは飲食を控えましょう。

具体的には1-2時間程度になりますが、病院で確認しましょう。

御疲れ様でした!

胃カメラの種類

経口内視鏡と経鼻内視鏡

胃カメラには口から入れる経口内視鏡と、鼻から入れる経鼻内視鏡があります。

両者の違いは以下のようになります。

 

・経口内視鏡

太め(直径10-7㎜)

喉を通るときに咽頭反射がおこりやすい(「おえっ」となり苦しい)

画像が奇麗で詳しく観察できる

 

・経鼻内視鏡

細め(直径6-5㎜)

経路的に咽頭反射が起こり難い(苦しくない可能性が高い)

画質が経口内視鏡よりは悪くなってしまう

鼻が痛くなったり、ときどき挿入不可能な場合がある

 

要するに、

経口内視鏡は少し苦しいけどよく観察できる。

経鼻内視鏡は楽な可能性が高いけど観察精度はやや落ちる。

ということになります。

自分にとってどちらの方が良さそうか、よく考えて選択しましょう。

個人的には、検査は観察する為のものなので経口をお勧めします。

ただ、咽頭反射が強くて口からはどうしても無理…という方などは、経鼻に挑戦してみるのも良いのかなと思います。

鎮静薬使用の有無

 一般的に「麻酔をして胃カメラをする」「寝ながら胃カメラをする」というのは、この鎮静薬の使用を指しているのだと思います。

先に説明した喉の麻酔、とは関係ありません。

点滴や注射によって鎮静薬を投与し、うとうとした状態を作ります。

検査中の記憶も残らない場合が殆どです。

うとうとしたまま胃カメラを行うので、苦痛が少なくなります。

ただし、鎮静薬は効き過ぎると呼吸抑制や血圧低下を招きます。

特に持病があったり高齢者の方は注意が必要です。

また、鎮静薬を使用した日は車の運転は出来ません。

 

鎮静薬の種類は多く、医療機関により使用する薬剤はさまざまです。

よくみかけるのは以下のお薬などです。

 

・ドルミカム(ミダゾラム)

ベンゾジアゼピン系の催眠鎮静薬

最初に一定量を注射し、その後必要に応じて追加投与していく

追加しすぎると、薬が効き過ぎることがある

覚醒を促すアネキセート(フルマゼニル)という薬があり、検査終了時に投与する

検査後のしっかりした覚醒までは30分程度かかることもある

 

・ディプリパン(プロポフォール)

静脈麻酔薬

少量持続投与していく(一度に注射するのではなく、持続的に薬剤を投与する)

検査終了時に持続投与を終了する

かかりやすく醒めやすい麻酔と言われており、覚醒ははやい

全身麻酔に使用される薬であり扱いには注意が必要

使用量を最低限にする為にも鎮痛薬と併用する

 

鎮静薬を使用した胃カメラの検査は、圧倒的に苦痛は少ないです。

ただし、薬の効き過ぎや副作用のリスクはあります。

その辺りを理解した上で、検査の選択をして頂ければと思います。

 個人的には、特に必要が無ければ鎮静薬無しでの検査の方が良いかと思います。

しかし検査の不安や不快感が強い方は、検討しても良いでしょう。

胃カメラがトラウマになってもう二度と受けない…となるよりは、鎮静薬を使用してでも継続して検査を受けた方が確実に良いと思うからです。

まとめ:胃カメラって大変だけど良い検査ですよ

今回は胃カメラについて説明させて頂きました。

全体の流れを見て、何となくでも印象をつかんでいただけたら幸いです。

胃カメラはしんどい検査であることは間違いありません。

ただ、選択次第では随分と楽に受けることも出来ます。

怖くて受けられない…という方も、一度医療機関に相談していただければと思います。

少しでも不安がとれて、皆さんが胃カメラを受けやすくなりますように。