正しく選ぼう!ピロリ菌の検査について解説します。
こんばんは、花芝です。
前回の記事でピロリ菌について概説しました。
今回はピロリ菌第二弾です。
具体的に、どんな検査があるのかを解説していきます。
ピロリ菌の検査は胃カメラを飲まなくてはいけないのですか?
血液検査でもピロリ菌検査が出来ると聞いたことがあるのですが…。
そんな疑問にお答えしつつ、検査や治療の注意点もお話していきます。
ピロリ菌とは
ピロリ菌は人の胃粘膜に持続感染し、胃がんなどの原因となる微生物です。
日本人では2人に1人という高確率で感染を認めます。
ピロリ菌を正しく検査し治療することは、胃がんの予防につながります。
また、ピロリ菌は人から人(特に親から子)へも感染します。
身近な人へ感染を拡大させない為にも、除菌は有用です。
詳しくは前回の記事をご覧ください。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌の検査は沢山の種類があります。
どの検査であっても陽性が出れば、ピロリ菌感染と診断します。
ただし、陰性が出ても「ピロリ菌がいない」と判断できない検査もあります。
また、内服中の薬などの影響を受けやすい検査もあります。
つまり自分の状況に合わせて、正しく検査を選んで判断することが大切です。
ここからは各検査の特徴について述べていきます。
これまでに受けた、またはこれから受ける検査の参考にして頂ければ幸いです。
尿素呼気試験
ピロリ菌は胃酸の中で生きていくために、まずウレアーゼを作ります。
そして尿素を分解し、アンモニアと二酸化炭素を生成します。
このアンモニアが胃酸バリアとして使われているのです。
余った二酸化炭素はすぐに吸収され、呼気中に排泄されます。
難しく感じた方は、以下のことだけ理解してください。
・ピロリ菌は尿素を分解し、胃酸の中和をおこなう力を持っている。
・胃酸中和の結果として、呼気中に二酸化炭素が排出される。
この原理を利用しているのが尿素呼気試験です。
これはとても簡単にでき、精度も高い主流の検査です。
尿素呼気試験の流れ
①試験用の専用パックに息を吹き込みます。
②検査薬を内服し、左側を下にして5分ほど横になります。
③その後、座って15分待ちます。
④新しい試験用の専用パックに息を吹き込みます。
息を吹いて、薬飲んで、待って、息を吹いたら終わりです。
簡単で、身体の負担的にも軽いものだと思います。
検査の仕組みについて簡単に説明します。
②の検査薬は、「13C」という目印がついた尿素なのです。
Cは炭素で、二酸化炭素の材料となります。
自然界では99%が12Cという炭素で、13Cは1%程度です。
(ただし、少ないだけで人体には無害です)
もしピロリ菌が胃の中にいた場合、検査薬の中の尿素が分解されます。
そして尿素が分解されると、目印の13Cも切り離されます。
この13Cは、最終的に13Cの目印のついた二酸化炭素となり、呼気中に吐き出されます。
④の検査で呼気中に13Cの二酸化炭素が増えていれば、ピロリ菌陽性となります。
これも難しく感じた方は、以下のように考えてください。
・尿素に目印をつけて胃の中へ入れ、ピロリ菌が分解するかを見る検査
・ピロリ菌がいれば尿素に付けた目印が分解され、呼気中に吐き出される
この検査の注意点ですが、まず空腹時に行う必要があります。
ピロリ菌と尿素をしっかり反応させるためです。
喫煙も影響がありますので検査前30分は控えましょう。
また、一部の胃薬(特にPPI/プロトンポンプ阻害剤)や抗生剤内服後は、偽陰性となる可能性があります。
これらの薬はピロリ菌を弱らせる効果があります。
そして退治しきれていないのに、検査は陰性と出ることがあるのです。
通常、検査前に2週間程度の休薬期間が必要となります。
ネキシウム、パリエット、タケプロン、タケキャブ…などがPPIです。
意外と内服中の方も多いので、注意しましょう。
迅速ウレアーゼ試験・鏡検法・培養法
3つを纏めましたが、全て胃カメラによる検査です。
基本的には、胃カメラによる胃の一般観察と同時または追加で行われる検査です。
具体的には胃粘膜の一部を摘まみとって採取し、直接組織を調べます。
この胃カメラによるピロリ菌検査の根本的な問題が一つあります。
それは、採取した場所にピロリ菌がいるかどうかしか判定できないことです。
胃の組織を取ると言っても、全ての場所から採取して胃を穴だらけには出来ません。
勿論、確率が高そうな場所を狙って検査をするのですが…。
ある場所の組織にピロリ菌がいないと判明しても、別の場所にいる可能性は否定できないのです。
つまり、上記の3つの検査(迅速ウレアーゼ試験・鏡検法・培養法)でピロリ菌がいないと言われたとしても、追加の検査を考慮する必要があります。
胃カメラの検査というと詳しい検査だから安心、と思われがちです。
胃カメラ自体はとても良い検査なのですが、ピロリ菌判定に関しては注意が必要です。
これらの検査は、胃カメラのついでに陽性が出たらラッキー、位の位置付けで考えています。
①迅速ウレアーゼ試験
迅速ウレアーゼ試験では、採取した胃の組織を尿素を含む特殊な試験薬に入れます。
この色が変われば、ウレアーゼがある=ピロリ菌がいる、と判定されます。
「迅速」という通り、その場ですぐに結果が分かります。
ただし、尿素呼気試験と同様の理由で、薬の影響を受けます。
②鏡検法
採取した胃の粘膜を、直接顕微鏡で観察します。
ピロリ菌が確認できたら、陽性となります。
③培養法
採取した胃の粘膜をすりつぶして、ピロリ菌の発育環境下で培養します。
ピロリ菌が確認できたら、陽性となります。
抗体測定(血液・尿)
ピロリ菌に感染すると、身体の中でピロリ菌に対する抗体がつくられます。
血液や尿を検査して、この抗体の有無を調べることが出来ます。
抗体があれば、陽性となります。
ピロリ菌が治療されて身体からいなくなると、ピロリ菌の抗体はゆっくりと減っていきます。
ただし、この減り方には個人差もあり、完全に消失する訳でもありません。
検査で区別できる程度に抗体が減るまでは、1年程度かかります。
ピロリ菌治療が成功したとしても、抗体の検査は1年間は陽性です。
つまり、ピロリ菌治療が成功したか否かの判定には、この検査は適しません。
糞便中抗原測定
ピロリ菌は胃の中に住み着いていますが、一部は糞便として排出されます。
その中には、生きた菌も死んだ菌もいます。
そのどちらに対しても、ピロリ菌抗体は反応します。
このことを利用して、便中にピロリ菌抗体が反応するものがないかを調べるのがこの検査です。(※)
特にデメリットの無い良い検査です。
薬の影響も受けにくく、ピロリ菌治療後も4週間程度あければ正確に判定出来ます。
ただ、検便になりますので、やや抵抗のある方もいらっしゃるかもしれません。
※抗体が反応するもののことを、抗原と言います
結局どの検査を選べばよいのか
検査について色々と述べてきましたが、結局、どれを選べば良いのでしょうか。
まず、医療機関によって、行っている検査と行っていない検査があります。
自分の受診する予定の医療機関がある場合は、確認しておきましょう。
また、どの検査も長所短所がありますので「これでなくては駄目」というものはありません。
その上で、私が個人的にお勧めする方法は、以下の通りです。
個人的にお勧めのピロリ菌検査方法
①初めてのピロリ菌検査で、胃薬や抗生剤内服中などでない場合は尿素呼気試験
②初めてのピロリ菌検査で、①以外の場合は糞便中抗原検査
③ピロリ菌治療後の方は尿素呼気試験(内服に注意)か糞便中抗原検査
要するに、尿素呼気試験と糞便中抗原検査のいずれかなら間違いありません。
ただ、その他の検査も場合によっては有用になってきます。
悩む場合は、医療スタッフなどにご相談ください。
また、上記は健診などで検査を選択することを想定しています。
かかりつけの先生などから指示がある場合は、確り相談されると良いでしょう。
まとめ
今回は、ピロリ菌の検査についてお話しました。
沢山の種類があるピロリ菌の検査ですが、それぞれの特徴が伝われば幸いです。
自分にあった検査を選択していきましょう。
そして検査で陽性が出れば、いよいよ治療になります。
次回はピロリ菌の治療について、お話していきたいと思います。