内科医花芝の健康小話

ちょっと健康に役立つことをお話します。

アルコール消毒の選び方と手洗いのポイントを解説します。

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新型コロナウイルスの感染報告が連日続いていますね。

そして、インフルエンザ感染にもまだまだ注意が必要な季節です。

病気に対しては、何よりもまず予防が第一。

大切なのは、「手洗い」「うがい」「咳エチケット」です。

本日はその中でも手洗いの正しい方法について解説していきます。

正しい手洗いの仕方をマスターしましょう! 

流水と石鹸による「手洗い」と、アルコール消毒の違い

「手洗い」が感染予防には大切だと昔から言われてきました。

しかし、手洗い以上に効果がある手指衛生法があります。

それが手指のアルコール消毒です。

石鹸と流水による「手洗い」よりも手指のアルコール消毒の方が、短時間で効果的に微生物を除去できると判明しています。

流水と石鹸による「手洗い」

石鹸と流水による「手洗い」も、勿論有効な手指衛生法です。

ただ、十分な効果を得るためには60秒程度必要とされています。

随分と長いですね。

ちなみに医療従事者の平均的な手洗い時間は7~10秒のようです。

手洗いに60秒かけるのは、かなり意識しなければ難しいのです。

 

なお、手洗いがアルコール消毒より有効な場面がいくつかあります。

「手洗い」がアルコールよりも有効な場合

①目に見える汚れがあるとき

汚染量が多いと言うことですので、まずは物理的に洗い流す必要があります。

②一部の菌・ウイルスに対して

アルコール消毒が、無効または効果が弱くなる微生物があります。

それが、有芽胞菌とエンベロープを持たないウイルスです。

具体的に挙げると、破傷風菌や、ノロウイルスなどになります。

これらの感染予防を考慮するときには、手洗いの有用性が高まります。

なお、インフルエンザウイルスやコロナウイルスはエンベロープを持つウイルスです。

アルコール消毒は有効ですので、ご安心ください。

アルコール消毒による手指衛生

一方、アルコール消毒の場合は20~30秒必要です。

これでも長いと感じる方は多いかもしれません。

しかし、手洗い60秒よりは、ハードルが低くなるのではないでしょうか。

医療従事者などで頻回に手指衛生が必要な場合は、基本的にはアルコール消毒が推奨されています。

これは業務中に「手洗い」60秒を何度も繰り返すのが現実的ではないからです。

 

また、手荒れの問題もあります。

上記の通り、アルコール消毒より手洗いの方が有効な場面もあるのです。

ならば、「手洗い」とアルコール消毒を両方すれば良いのでは、と考えるのは自然なことです。

しかし頻回な「手洗い」とアルコール消毒の併用は、手荒れを招きやすくなります。

医療従事者の手は患者さまに直接触れますので、荒れるのは感染対策の面でも望ましくありません。

結局:どちらもすれば良い

では、一般の方の感染予防はどうすれば良いのでしょうか。

一般の方の手指衛生のタイミングは、外出後、食事前、など回数が限られています。

医療従事者のように、1日に何十回も手指衛生の機会がある方は少ないと思います。

ですから、可能であれば「手洗い」「アルコール消毒」どちらも行うことを推奨します。

いやいや、私は医療従事者ではないですが、頻回に手を奇麗にしたいです!

その場合は、アルコール消毒を平時は使用し、ここぞという時に「手洗い」とアルコール消毒の併用をするのが良いでしょう。

アルコール消毒液とは

店頭にはさまざまなアルコール消毒液が並んでいると思います。

大切なのは、成分と濃度です。

大きく分けて「エタノール」「イソプロパノール」があります。

消毒用エタノール(70-80%)

エタノールは最も一般的なアルコール消毒液の成分です。

そして、消毒用エタノールの濃度は70-80%になります。

これより濃くても薄くても、微生物の除去効果は落ちます。

ちなみに、無水エタノールというのは純度の非常に高いエタノールです。

99%以上の濃度がありますが、すぐに蒸発してしまい手指消毒には不向きです。

また、手も荒れると思います。

イソプロパノール(70%)

イソプロパノールという成分のアルコール消毒液も販売されています。

50%と70%のものが多いですが、70%の方が消毒効果は高いです。


エタノールよりも安価なことが多いです。

ただ、一部の微生物に対して消毒効果が弱いです。
具体的には、エンベロープを持たないウイルスに対してです。
一般細菌やインフルエンザウイルス、コロナウイルスへの効果はエタノールとほぼ同様だと考えられます。

また、イソプロパノールはエタノールよりも手が荒れやすいです。

総合して、エタノールの使用が勧められます。

正しい手指衛生の方法、ポイント

「手洗い」と「アルコール消毒」を両方行うとして、ポイントを纏めました。

①指輪や時計は外す。手首も洗えるように袖を捲る。

②石鹸と流水で確りと手洗い。目標は60秒以上。

③手洗い後は、ペーパータオルなどで手を乾かす。

④消毒用エタノールを十分量使用して手指に擦りこむ。目標20秒以上。

⑤必要であればハンドクリームなどでケアを行う

各項目を、一つずつ見ていきます。

①指輪や時計は外す。手首も洗えるように袖を捲る。

 手洗いは爪の間から手首までが基本です。

邪魔になるものは、事前に外しておきましょう。

②石鹸と流水で確りと手洗い。目標は60秒以上。

手指を流水で濡らして、石鹸を適量とります。

手の平、手の甲、指の間、指先(爪の間)、手首を順に洗います。

60秒かけようと思うと、かなり隅々まで洗わないと時間が余ってしまう筈です。

洗い終わったら、流水でよくすすぎましょう。

③手洗い後は、ペーパータオルなどで手を乾かす。

手洗い後、アルコール消毒に移る前に手をよく乾かします。

濡れた手のままでアルコール消毒をしてはいけません。

アルコール濃度が変わって、消毒効果が落ちてしまいます。

ペーパータオルや清潔なタオルなどで、確り手を乾かしましょう。

④消毒用エタノールを十分量使用して手指に擦りこむ。目標20秒以上。

消毒用エタノールをたっぷりと手の平にとります。

適量は手の大きさ次第ですが、20秒間で漸く乾く位の量が望ましいです。

早く乾き過ぎてしまう時は、十分量ではない可能性が高いです。

あとは手洗いのときを思い出して、隅々まで擦りこんでいきましょう。

⑤必要であればハンドクリームなどでケアを行う

個人差がありますが、手指衛生をしていると手荒れは本当によく起こります。

頻回にしていなくても、手が荒れやすい方もいるでしょう。

手荒れが原因で、手洗いが出来なくなってしまっては大変です。

こまめにケアを行っていきましょう。

 

手荒れの予防は、一番は保湿です。

手洗いやアルコール消毒後に、ハンドクリームなどで保湿をおこないます。

保湿剤入りのアルコール消毒液の使用も選択肢に入ります。

まとめ

 今回は手洗い、アルコール消毒についてお話させて頂きました。

手指衛生は一番身近で、簡単にできる感染予防です。

新型コロナウイルス感染対策は勿論ですが、その他の病気にも有効です。

ぜひ、この身近な感染対策を活用して、健康な生活を送ってくださいね。

少しの工夫で効果が高まるのが手指衛生です。日頃から実践してみてくださいね。