内科医花芝の健康小話

ちょっと健康に役立つことをお話します。

高血圧はどこから?正しい測り方と基準値・目標について。

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皆さんは、血圧を測る機会はどれくらいあるでしょうか?

病院受診の際は勿論、最近では公共施設や会社にも設置されていることがあるようです。

健診でも血圧についての質問を多く頂きます。

自宅での血圧は朝と夜、どちらに測れば良いのですか?

普段は問題ない血圧だけど、病院に来ると上がってしまうんです!

健康の身近なバロメーターである血圧。

その測定方法や目標値などについて今日はお話していきます。

 高血圧の基準(2019ガイドラインより)

血圧が高いのは良くない、ということは多くの方がご存知だと思います。

しかし、「130なら危ない」「いやいや140までは大丈夫」など、色々な情報が氾濫していて分かり難くなっているのが現状です。

実は医師の間でも、何処まで血圧を下げるのかは意見が分かれています。

今回は最新の『高血圧治療ガイドライン2019』より、高血圧の基準をお伝えします。

花芝も実際、このガイドラインを参考に診療を行っています。

正常血圧

正常血圧

診察室血圧:120/80mmHg未満

家庭血圧 :115/75mmHg未満

正常血圧は、診察室血圧で120/80mmHg未満、家庭血圧で115/75mmHg未満です。

多くの方の想像より、厳しい基準だったのではないでしょうか。

実際、この数字をクリアできている方は健診でもかなり少ない印象です。

 

どうしてこの数字が設定されているかというと、血圧120/80以上では血圧が上がるごとに、脳心血管病リスクが上昇すると分かっているからです。

そして、正常血圧より高い血圧の方は、全員生活習慣の修正が必要とされています。

内服治療までは要らずとも、何らかの対応をしていくのが望ましいのです。

 

なお、2014年の基準では、至適血圧を120/80mmHg、正常血圧を130/85mmHgとしていました。

名称の変化を見るだけでも、厳しくなっていることが受け取れます。

また、健診でも現状ではこの「130/85未満」を正常(A判定)としています。

多くの方の「血圧130までは大丈夫」は、こういった理由なのでしょう。

血圧に関しては、健診でA判定だったとしても注意が必要です。

実はもっと下げた方が良いこともある、と知って頂けたら幸いです。

正常値高血圧・高値血圧

正常値血圧・高値血圧

診察室血圧:120-139/80-89mmHg

家庭血圧 :115-134/75-84mmHg

血圧は実は何段階にも分類されているのですが、今回は分かりやすくまとめます。

正常値高血圧・高値血圧は、正常ではないけれど、高血圧まではいかない方。

高血圧予備軍、のような位置づけだと考えてください。

この分類に留まる方でも、投薬治療が望ましいことがあります。

それは脳心血管病リスクが高い場合です。

 

脳心血管病リスクは具体的には以下のものなどです。

最終的には医師の判断が必要となってきます。

該当する方は、かかりつけの先生に相談してみるのも良いと思います。

 

脳心血管病リスク

中等リスク:65歳以上、喫煙、脂質異常症、男性

高リスク:脳心血管病既往、非弁膜症性心房細動、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病、中等リスク3つ以上

高血圧

高血圧

診察室血圧:140/90mmHg以上

家庭血圧 :135/85mmHg以上

高血圧にもⅠ度高血圧、Ⅱ度高血圧、Ⅲ度高血圧という分類があります。

基本的には数字が増えるほど、血圧は高くなります。

今回は煩雑なので、ひとつに纏めさせていただきました。

高血圧の方は、生活習慣の修正を積極的におこなわなくてはいけません。
また、必要に応じて降圧薬治療を開始することが推奨されています。

血圧の目標値。此処を目指そう。

生活習慣の改善や投薬治療を開始するとして、どれ位の血圧を目指せば良いのでしょうか。

「正常血圧」を目指したいのは山々です。

しかし、急激な降圧は身体に悪影響を招くことがあります。

また高齢者の方の場合、強すぎる降圧が負担となることもあります。

 

総合して、降圧目標値は以下のように決められています。

降圧目標

75歳未満の成人 :診察室血圧 130/80mmHg
75歳以上の高齢者:診察室血圧 140/90mmHg

家庭血圧の目標は、これより5mmHgずつ低いと考えてください。

ただし、75歳以上の方でも薬の投与に問題が無ければ、厳しい降圧目標を目指すことがあります。

特に糖尿病や慢性腎臓病の方は、降圧目標が厳しくなることがあります。

自宅での正しい血圧の測り方

血圧計の選び方 

血圧計には腕で測るものと、手首で測るものがあると思います。

より正確さを求めるなら腕で測定するものが良いです。

ただ、私はとにかく測定してみる、測定を続けることが大切だと考えています。

手首測定の方が気軽で続けられそうだと思うのなら、それでも構わないと思います。

まずは一台、家庭に血圧計を準備してみましょう。

血圧を測る時間帯

血圧は小さなことでも変化します。

同じ人でも、時間帯や活動の有無・その時の感情などで血圧は変動します。

正確な記録を取るために、毎日出来るだけ同じ時間で測定しましょう。

血圧は朝に上がる方、夜に上がる方、日中高い方、など色んなパターンがあります。

自分の状態をよく知る為に、可能であれば朝・夜2回の測定が望ましいです。

そんなに沢山測るのは無理、という方は朝だけ、夜だけでも大丈夫です。

とにかく測定をすること、継続することが大切です。

朝は起床後、朝食前、排尿した場合は少し休んでから測りましょう。

夜は入眠前、リラックスできる状態の時に測りましょう。

血圧の測定・記録を付けましょう

測定前は、出来れば1-2分程度座って安静にすることが理想です。

難しい時は、数回深呼吸して気分を落ち着けましょう。

また、可能であれば2回測定してその平均をとるのが望ましいとされています。

しかし難しければ1回でも構いません。

そして測定結果は日時と共に必ず記録しましょう。

その記録の積み重ねが、健康になる為の大切なデータになります。

病院で血圧が上がる「白衣高血圧」について

家庭血圧は問題ないのに、診察室血圧だけが上昇する方がいます。

いわゆる、「病院に来ると血圧が上がる」という方です。

これは「白衣高血圧」と言われ、緊張などが原因だと考えられます。

血圧の診断は基本的には家庭血圧で行います。

ですから、家庭血圧が問題ない場合、基本的には治療対象にはなりません。

 

ただ、白衣高血圧の方にもリスクがあります。

実は白衣高血圧は、将来通常の高血圧に移行しやすいことが分かっています。

また、緊張やストレスで血圧が上がりやすい、というのも注意が必要です。

もし日中に仕事のストレスなどを感じ続けている場合、その間ずっと血圧が高くなっている可能性があります。

血圧が高くなっている時間が長くなると、当然、脳心血管リスクが高まります。

白衣高血圧の方は、家庭血圧を測定したり、可能であれば外出先でも血圧を測定してみてくださいね。

本当に怖い「仮面高血圧」

病院では血圧が正常だけど、家では血圧が高い方がいらっしゃいます。

つまり、白衣高血圧の逆のパターンです。

こういった方は「仮面高血圧」と言います。

このタイプの方は、病院の診察だけでは高血圧を見落としてしまいます。

 

例えば早朝高血圧という、朝方にかけて血圧が上がるタイプの方がいます。

また、夜間に血圧が上がりやすい方もいます。

このような場合、家庭での血圧を測定していなければ、高血圧に気づくことが出来ません。

そして仮面高血圧の方の脳心血管リスクは、普通の高血圧の方か其れ以上、と言われています。

少しでも心配な方は、試しに自宅で血圧を測定してみるのが良いかもしれません。

まとめ

 今回は、高血圧の基準や測定方法についてお話しました。

意外と高血圧の基準が厳しく、驚いた方も多いのではないでしょうか。

何をするにも第一歩は、自分の状態を正しく把握することです。

自宅での血圧測定、是非始めてみてくださいね。

血圧を測定・記録して、健康への第一歩に!