胃カメラとバリウム検査(胃レントゲン)ってどちらが良いの?
健康診断で胃の検査をするとき、二つの選択肢があります。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)とバリウム検査(胃部レントゲン)です。
胃カメラって辛いと聞くから受けるのが怖いです。
若いうちはバリウムで良いと聞きました。
そんな疑問を今日は解説していきたいと思います。
せっかく健診を受けるなら、より有意義に検査を選択していきましょう!
胃カメラが良いです。
前振りに比して結論が速すぎるのですが、胃カメラが良いです。
この先を読むのが面倒な方は、とにかく胃カメラだ!と覚えてください。
勿論、バリウム検査が活躍する機会も無くはないです。
しかし胃カメラとバリウム検査のいずれかを選択するなら、圧倒的に胃カメラを選ぶべきです。
以下に理由を並べてみます。
健診医が胃カメラをお勧めする9つの理由
①(咽頭)食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察できる
②初期の病変なども発見しやすい
③近づいて詳細観察を行うことも可能
④必要と判断した場合、病変の組織検査が追加出来る
⑤胃カメラの所見だけである程度ピロリ菌感染歴まで推定できる
⑥逆流性食道炎などは胃カメラでないと判定が難しい
⑦手技の上手下手がバリウム検査よりもばらついていない
⑧最近の胃カメラは昔よりは苦しくない
⑨費用も場合に寄ってはバリウム検査より安いことがある
⑩被曝が無い
すごく沢山になってしまいました。
ひとつずつ、簡単に見ていきましょう。
①(咽頭)食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察できる
これが全てと言っても過言ではありません。
胃カメラでは、直接視覚的に粘膜を確認できます。
荒れてる、ポリープがある、血が出ている…など一目瞭然です。
患者さまに説明するときも概ね理解していただけます。
一方、バリウム検査の画像はレントゲン写真です。
白黒で方向が回転したり骨の影が入ったりと、ややとっつきにくい印象です。
検査の時に発泡剤を飲んで胃を膨らますのですが、その泡がポリープと紛らわしくなったりもします。
つまり、泡とポリープの違いすら、鑑別困難が起こり得るのです。
②初期の病変なども発見しやすい
胃カメラでは初期の胃がんなども発見が可能です。
胃がんはごく初期であれば内視鏡的切除も可能となります。
一方、バリウム検査ではある程度粘膜異常が進行しなくては、病変の発見が難しい場合が多いです。
③近づいて詳細観察を行うことも可能
④必要と判断した場合、病変の組織検査が追加出来る
バリウム検査で異常を指摘されたら、精密検査として胃カメラをしますよね。
健診で最初から胃カメラの検査をした場合、異常があたらすぐに精密検査に移れます。
病変から組織を採取して、病理検査も可能です。
病理検査の結果が出るまでにはある程度時間がかかります。
ですので、できるだけ早く行っていた方が有意義だと思います。
⑤胃カメラの所見だけでピロリ菌感染歴まで推定できる
胃の健診でピロリ菌の話は外せません。
花芝は健診中、3割くらいの時間はピロリ菌トークをしている気がします。
詳細はまた別の機会に述べますが、ピロリ菌は感染している状態だと胃がんなどのリスクが上がります。
ただし、簡単に除菌治療が可能です。
こんなに簡単にがんのリスクを減らせるものもそう多くはないので、積極的に説明するようにしています。
ピロリ菌は基本的にはピロリ菌検査をしなくては感染の判定が出来ません。
ただ、胃カメラの所見を見れば、粘膜の萎縮の有無などでピロリ菌感染の推測が可能です。
花芝の病院では、胃カメラ所見でピロリ菌感染が疑われる方には、そのまま同日にピロリ菌検査をお勧めしています。
なお、バリウム検査でも実はピロリ菌感染の推測はある程度可能です。
しかし確実性に乏しく、進行しなければ見分けがつきにくいことも多いです。
やはり粘膜を直接確認できる胃カメラに軍配が上がります。
⑥逆流性食道炎などは胃カメラでないと判定が難しい
食事の後に胸やけが…という方が心配されるのが、逆流性食道炎です。
テレビでも一時期CMが出ていましたし、病気の認知度が上がっているようです。
この逆流性食道炎については、食道粘膜の損傷の程度で診断を付けます。
粘膜がどの程度、発赤しているか障害されているか…と見ていきます。
つまり粘膜が確認できなくては診断も付けられません。
これは胃カメラでなければ難しいことです。
ちなみに逆流性食道炎の原因となる「食道裂孔ヘルニア」ならバリウムでも診断可能です。
勿論、胃カメラでも診断可能です。
⑦手技の上手下手がバリウム検査よりもばらついていない
個人的にはこの項目がかなり大きな意味があると思っています。
基本的に検査は上手に行われるべきだと思います。
しかし、現実的にはそうでないことも沢山あります…。
特にバリウム検査は、奇麗な写真を撮るのにかなり訓練が必要です。
また、読影にもある程度の勉強が必要です。
胃カメラに関しては、技能についてはバリウム検査よりも平均化されている印象です。
少なくともカメラで直接見えていますので、明らかに異常があれば分かります。
勿論、素晴らしい先生や技師さんも沢山居ます。
けれど健診を受けた時、自分の検査をしてくれるのがどんな人なのかは分かりません。
良質な検査を提供しないのならばそれは医療機関が悪いのですが、それを判別する方法が無い以上、自分である程度回避していくのも選択肢なのかなと思います。
⑧最近の胃カメラは昔よりは苦しくない
昔よりは胃カメラも細くなってきているようです。
ただ、全く苦しくないです、という嘘はつきません。
確かに相応に苦しいです。残念ながら…。
どうしても怖い、咽るという場合には、麻酔を使用して検査も出来ます。
ちなみに鼻から細いカメラを挿入する経鼻内視鏡も存在します。
胃カメラは何が一番苦しいのかというと、喉を通過するときなのです。
鼻から挿入すればその「おえっ」となる咽頭反射が起こり難いです。
しかし個人的には、できれば経口での内視鏡検査をお勧めします。
単純に、太いカメラの方が解像度が高いのでよく観察できるためです。
この辺りは技術の進歩で改善されていくとは思います。
⑨費用も場合に寄ってはバリウム検査より安いことがある
胃カメラの方がバリウム検査より高い。
と、何となく思い込んでしまっている方もいらっしゃると思います。
しかし健康診断の場合、自治体からの補助金などがあり、総合すると胃カメラ検査の方が費用が安くなる場合もあるようです。
費用が気になるという方は、具体的にどちらの検査がどのくらい高いのか、確認してみるのも良いと思います。
⑩被曝が無い
胃カメラの検査は被曝がありません。
年に一度のバリウム検査の被曝は大きいものではありません。
ただ、それを避けられるというのも胃カメラの利点には挙げられると思います。
バリウム検査の方が良い人っていますか?
ここまで長々と胃カメラが良いですよというお話をしてきました。
しかし、勿論バリウム検査にも得意分野はあります。
バリウム検査では胃などの形を全体的に見ることが出来ます。
胃の粘膜は奇麗だけど、胃が膨らみにくい、という異常を見つけるのは得意です。
これはスキルス胃がんなどの所見になります。
ただ、胃カメラでも絶対に見つからない訳ではありません。
スキルス胃がんのみを心配して、その他の利点を考えずにバリウム検査一択にする、というのは極端のような気がします。
基本的には胃カメラの検査をメインで考えて、その補助的な位置としてバリウム検査を置くのが良いのではないかと思います。
胃カメラの検査を受けて異常がないけど、胃の症状がやはり続く。
そんな場合には、早めにバリウム検査を追加するのが良いのではないでしょうか。
まとめ:胃の検査は胃カメラがおすすめですよ。
まとめですが、胃の検査は選択できるなら胃カメラにしておきましょう。
胃のバリウム検査は悪い検査ではないのですが、健診で受けるのならば胃カメラの方が明らかにメリットが大きいです。
また、個人的には経鼻内視鏡ではなく、経口での内視鏡をお勧めします。
胃カメラで、しっかりと胃を観察しましょう!