内科医花芝の健康小話

ちょっと健康に役立つことをお話します。

薬って一度飲み始めると止められなくなるんですか?に答えます。

健康診断で検査値に異常がある場合、薬の内服をお勧めする場合があります。

そんなとき、よく言われるのが次の台詞です。

薬って一度飲み始めると止められなくなるんでしょう?

そんなことないですよ!

と、まずはお伝えしたいのですが、確かに「止めない方が良い」方もいらっしゃいます。

今日はこのよくある、そして根深い心配について解説していきます。

お薬と正しく付き合っていきましょう。

 薬を内服する場合には、何故必要なのかを考えましょう。

風邪の時に風邪薬を内服する方は多いと思います。

お腹が痛いとき、痛み止めを内服する方もいらっしゃるでしょう。

 困った症状があるときに、それを緩和する為の薬というのは分かりやすいですね。

癌になってしまった場合、抗がん剤を使用することがあります。

関節リウマチに罹患したら、リウマチのお薬を内服します。

明らかに身体に支障のある疾患に罹患した時、その治療薬を内服するのも分かりやすいです。

 

では、血圧が高い時にはどうでしょう。

コレステロールが高い場合には、どうでしょう。

検査では異常と言われるものの、痛くも痒くもなく困ってもいない。

数字が異常と言われても今は元気にしているし。

薬で無理に基準値(正常値)に近づけることないんじゃないかな?

薬を飲むなんて何だか病人になった気分だし、大げさな気がする…。

そんな風に思っているあなた、油断していると大変なことになりますよ!

最近ではテレビで健康番組なども流行っていますし、上記のような考えの方は随分と減っています。

ご存知の方も多いと思いますが、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)は、重篤な疾患に罹患するリスクを高めることが分かっています。

具体的に言うと、虚血性心疾患(心筋梗塞など)、脳卒中、一部の悪性腫瘍、認知症などですね。

痛くも痒くもないけれど、身体の中では着々と重病に罹患する準備が行われているのです。

これらを予防する為に、生活習慣病の管理がとても大切になります。

薬が止められなくなると心配する方のパターン

薬って止められなくなるんでしょう、と心配される方は多くいらっしゃいますが、よく内容をお聞きするといくつかのパターンに分かれます。

①一生薬を飲み続けるのが怖いんです!

②飲み始めた薬を止めると、大変なことが起こるんじゃ…。

③周囲で薬を中止できた人を見たことが無いのですが。

順番にお答えしていきます。

①一生薬を飲み続けるのが怖いんです!

薬を内服することを、罰ゲームのように感じられている方がいらっしゃいます。

そのお気持ちは、正直よく分かるのです。

何か月かに一回病院に行って、高い病院とお薬代を払い、毎日面倒な服薬を続ける。

書いていて非常に憂鬱になって来ました。

しかし、ではなぜそれが必要なのかを思い出してみましょう。

そう、今後の健康の為、重篤な疾患を予防する為、です。

薬を飲むのも未来への投資と、前向きに考えて頂けると嬉しいです。

生活習慣病には遺伝的な要因も関連します。

だから、どれだけ健康に気を付けて生活していても罹患してしまうこともあります。

薬は決して、健康を気遣わなかった人間への罰ゲームではないのです。

むしろ努力しても届かない部分を助けてくれる味方です。

②飲み始めた薬を止めると、大変なことが起こるんじゃ…。

 内服し始めた薬を中断すると、逆に恐ろしい症状が出現するのでは。

そのような恐怖感を訴える方もいらっしゃいます。

結論から申しますが、そのような作用のある薬はかなり少ないです。

確かに急な自己中断で深刻な異常が出現する薬はいくつかあります。

(ステロイド薬やパーキンソン病のお薬が有名です)

しかし、一般的な血圧やコレステロールの薬の場合、まず大丈夫です。

 

中断して何か異常が出る可能性がある場合、必ずその旨、説明もあると思います。

ただし、だからといってうっかり以外での自己中断は止めましょう。

お薬を止めたい、変更したい場合は、かかりつけの先生に相談しましょうね。

③周囲で薬を中止できた人を見たことが無いのですが。

 先程、薬は必要だから飲むもの、と言いました。

つまり必要がなくなれば、やめることは十分可能です。

具体的に言えば、例えば高血圧のお薬を止めたい場合、薬が無くても血圧が基準値内である状態を維持できればいいのです。

それが出来ないから苦労してるんだけど!

分かる。

 生活習慣病は、遺伝的要因と環境要因が関係します。

遺伝の方は努力ではどうしようもありませんが、環境は変えることが出来ます。

よく言われていますが、「食事と運動」への配慮ですね。

ただ、一度生活習慣病になってしまえば、確かに改善するのは至難の業です。

改善の余地が大きい方であっても、なかなか努力って続きません。

すぐに効果が現れず、挫折もしやすいです。

更に、年を経るにつれて生活習慣病のリスクは上がってきます。

何もしなければ生活習慣病は良くなるどころか悪化する、と考えて間違いないです。

 

しかし、改善は難しくとも、不可能ではありません。

実際、私の患者さまで一度始めた内服を中止できた方は沢山いらっしゃいますよ!

それに結果が伴わずとも、努力は決して無駄にはなりません。

努力は確実に健康には良い方向で働いていると思いますので、希望を捨てずに頑張りましょう。

薬に頼り過ぎるのも問題です。

なお、この逆パターンの方も偶にいらっしゃいます。

私は血圧の薬を飲んでいるので、塩分も気にせずとります。薬が何とかしてくれるでしょう!

今回は薬のお話でしたが、生活習慣病治療の基礎となるのは生活習慣の改善です。

内服治療を開始する前に生活習慣の改善を試みることも多いですし、内服開始後も生活指導は継続します。

生活が乱れていては、内服治療の効果を最大限に発揮できません。

あなたの健康を維持できるのは、あなただけです。

医者も薬も、その手助けしか出来ません。

薬もその効果を過信することなく、賢く力を借りながら、健康を保って行きましょう。

まとめ:薬は一度飲み始めても止められるけど、一番大事なのは健康の維持

 まとめですが、大抵の薬は内服後も中止すること自体は可能です。

しかし、それが自分にとってメリットがあるのかどうかはよく考えましょう。

確かに不必要な薬は飲むべきではないと思います。

ただ、「薬」というだけで毛嫌いして、最終的に大病を患うことになっては悲しいです。

薬について不安や心配なことがある場合は、かかりつけの先生によく相談してみましょう。

あなたの健康を守れるのは、あなただけです。

納得した上で必要な治療を行っていくのが、健康への近道だと思います。