内科医花芝の健康小話

ちょっと健康に役立つことをお話します。

風邪の時のクーリング(冷却法)について解説します。

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風邪をひいてしまって、熱が…。

大変、冷やさないと!

今日はクーリングについて考えてみましょう。

風邪で熱が出た時、皆さんはどうしていますか?

氷枕や冷えピタを使ったことがある方も、多いのではないでしょうか。

今日は自宅で出来るクーリング(冷却法)についてお話します。

熱で寒気がしているけど、冷やさなきゃダメですか?

どこを冷やすのが良いのでしょう。

そんな疑問にお答えしていきます。

熱って下げた方が良いの?

体調が悪くなってしまい熱が出たら、下げたくなるものです。

熱を下げるには2種類の方法があります。

①クーリング(冷却)する

②解熱剤を飲む

今回は、①のクーリングについてお話していきます。

 

ただ、そもそも熱は下げた方が良いものなのでしょうか?

熱が出てしまう原因は色々あります。

その中で一番よく経験するのが風邪などの感染症でしょう。

感染症のときに熱が上がるのは、身体が病気と闘っているためです。

白血球は感染症の時に細菌やウイルスをやっつける役割を持ちます。

体温が上がると、この白血球の働きが活発になるのです。

クーリングしなくても良いとき

発熱は病気と闘う免疫機能を助けてくれる働きを持ちます。

ですから、必ず下げなくてはいけないものではありません。

 

具体的には、熱があっても倦怠感などが軽い場合は様子見で大丈夫です。

勿論、休息をとることが望ましいのは言うまでもありません。

ただし無理に熱を下げる必要はありません。

微熱の場合も同様です。

クーリングしない方が良い時

また、クーリングしない方が良い時もあります。

それは、悪寒・寒気があるときです。

※高熱の時に寒気が起こる理由※

感染症にかかると、身体が戦闘モードに入ります。

すると白血球の働きを助けるために脳が、

「体温を上げるように」

と、命令を出すのです。

そして体温をあげる為に、震えが起こります。

身体が冷たすぎると脳が錯覚して、寒気が起きるのです。

悪寒・寒気は、体温が上がりきるまで続きます。

この途中に無理にクーリングをすると寒気が悪化します。

何より本人の苦痛も大きく、よくありません。

寒気がしている最中は、むしろ保温が必要です。

熱が上がりきればほてりを感じますので、冷やすのはそれ以降で検討しましょう。

クーリングした方が良いとき

病気と闘うための発熱ですが、熱が上がると体力を消耗します。

体力の低下が激しいと、病気にも負けてしまいます。

このような場合には、熱を冷ました方が良いでしょう。

 

具体的には、

・高熱の為に苦痛が大きいとき

熱の苦しさで食事や水分が十分にとれないとき

熱の為に呼吸が苦しいなどの症状があるとき

なお下二つの場合は、出来るだけ早い病院受診が望ましいです。

 

高熱が続き過ぎると、身体への悪影響が心配な方も多いと思います。

41度以上の発熱で脳へのダメージの可能性があります。

ただ、一般的な感染症でこの温度に達するのは稀です。

とはいえ、高い熱はやはり怖いと感じるものです。

明確な基準はありませんが、38.5度以上であれば解熱を検討しても良いと思います。

クーリングの方法

では、正しいクーリング法について考えていきましょう。

クーリングの場所

まず、身体の何処を冷やすか、がポイントになります。

よく見かけるのがおでこを冷やすパターンです。

しかし、熱を下げるという意味においては効果的ではありません。

 

医療現場などでよく行われているのが、

「三点クーリング」

というものになります。

これは、首・脇・鼠径部(股の付け根)を冷やすものです。

この三か所には太い動脈が走っています。※

 

では、太い動脈を冷やすと何故良いのでしょうか。

体温には、表面体温深部体温があります。

このうち重要なのは、身体内部の深部体温です。

 

身体の表面ばかり冷やしていても、効果は乏しいのです。

内部を効率よく冷やすには、どうすれば良いでしょう。

血液は身体の内部で、全身に巡っています。

そして、太い動脈には沢山の血液が流れています。

ここで沢山の血液を冷やして全身へ送り出せば、身体全体が効率よく冷やされるという考え方です。

 

※首:頸動脈、脇:腋窩動脈、鼠径部:鼠経動脈

クーリングに使うもの

クーリングに使用する道具に制限はありません。

便利だと思われるものを、以下に書き出してみます。

 

・氷枕・アイスノン

一番スタンダードなクーリング道具です。

適度な柔らかさがあれば、当てやすいでしょう。

・保冷剤

保冷剤をクーリングに使用することが出来ます。

ただ、直接当てると凍傷のなることがあります。

タオルで包むなど、工夫をしてみてください。

・冷やしたタオル

冷たい水で濡らしたタオルなども効果的です。

細かな場所にも当てやすくてよいと思います。

冷えピタの使用には注意が必要

熱冷ましに冷えピタを使用される方も多いかと思います。

適度な使用なら問題ないですが、特に小児への使用は気を付けましょう。

 

冷えピタを額に使用した乳児で窒息事故が報告されています。

また、冷却効果も実はあまり高くありません。

(ひんやりして苦痛緩和効果はあります)

全身に大量に貼ると、熱がこもることもあるようです。

少なくとも小児への使用は、避けた方が無難かもしれません。

クーリングの限界

ここまでクーリングについてお話させて頂きました。

しかし、実は…。

 

クーリングの解熱効果は殆どない、という報告もあります。

一方、いやいや下がったよ、という報告もあります。

医療現場でも伝統的にクーリングはされていますが、実は研究者の見解は分かれているのです。

 

ただ、冷やすだけなら一般的に大きな害はありません。

経験的にも、クーリングで熱が下がることを実感されている方もいるでしょう。

何より発熱時、冷やすと心地良いと感じることも多いです。

総合して、「何が何でも冷やさなきゃ」とまではいかなくとも…。

苦痛緩和の意味も含めて、クーリングは有効だと考えています。

おでこを冷やしたって良い

おでこを冷やすのは効果が乏しいと、上述しました。

これはあくまで、冷却効果を考えた場合です。

おでこを冷やして心地良ければ、冷やしたって良いのです。

 

また、おでこに触れるのは、風邪の心細さや辛さを緩和する効果があります。

こういった精神面でのケア的な意味では、有効だと思います。

(ただし前述した事故などには気を付けましょう)

まとめ

今回は風邪の時のクーリング方法についてお話しました。 

なお、全体を通して、家庭で看病できるレベルの病状を想定しています。

熱がどんどん上がったり症状が重くなる時は病院へ行きましょう。

適切な苦痛緩和で、病気をやっつけましょう!