内科医花芝の健康小話

ちょっと健康に役立つことをお話します。

肥満(BMI)や腹囲高値の正しい目標設定法。

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体重が最近、増えてきているなぁ…。

健診で腹囲が大きすぎるって言われました。

思い立ったが吉日です。ダイエットしましょう!

 

健康診断で指摘されたり、自分で測定してみたり。

体重や腹囲が気になってはいませんか?

今回はそんな方の為に具体的な目標値を説明します。

元気な生活を送るため、自分の理想体重を知っておきましょう。

 

どれくらい痩せれば良いの?

一カ月に何キロ体重を落とせば良いの?

そんな疑問にお答えしていきます。

BMIと標準体重

BMIとは

理想体重はBMIから計算します。

BMIとはBody Mass Indexのことです。

身長と体重から、簡単に割り出すことが出来ます。

BMI=体重(kg)÷ {(身長(m))×(身長(m))}

身長が異なる方を、単純に体重で比較することは出来ません。

BMIなら全ての方に適応することが出来ます。

肥満の基準値

BMIが高いというのは、肥満があると言うことです。

BMIの判定は6段階に分かれています。

■肥満の基準■

BMI<18.5     低体重
18.5≦BMI≦25.0 普通体重
25.0≦BMI<30.0 肥満(1度)
30.0≦BMI<35.0 肥満(2度)
35.0≦BMI<40.0 肥満(3度)
40.0≦BMI    肥満(4度)

普通体重の範囲に収まっていれば大丈夫です。

低体重、肥満、どちらかに入る方は改善を心がけましょう。

標準体重とは

では、減量(ダイエット)をする時は何kgを目指せば良いのでしょう。

医学的には標準体重というものが決まっています。

これはBMIが22となる体重です。

つまり、この数字となる体重が目標になります。

具体的には、以下のように計算できます。

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)× 22

また、痩せすぎの方も同様、この体重を目指しましょう。

腹囲の測り方と基準値

腹囲の測り方

「家で測るより、腹囲が大きいのですが…!」

というクレームを時々受けてしまいます。

おそらくそれは、測り方の差異によるものです。

 

健康診断では、腹囲はおへその高さで測ることになります。

いちばん細い所ではないのです。

なお、お腹にお肉が沢山付いて垂れている時は…。

肋骨の下限と骨盤の上限の真ん中あたりで測ることになります。

腹囲の基準値

腹囲の基準値は、男性と女性で違います。

少し不公平な気もしますが、きちんと理由があります。

腹囲の基準値

男性:85cm未満で正常

女性:90cm未満で正常

身体の脂肪の内、特によくないのが内臓脂肪です。

内臓脂肪が多いと生活習慣病にかかりやすくなります。

内臓脂肪がたまると、所謂ぽっこりお腹になります。

腹囲を測るのは、この内臓脂肪を簡易的に確認する為です。

 

身体の脂肪の内、もう一つ有名なのが皮下脂肪です。

皮下脂肪がたまると、所謂洋ナシ体型になります。

そして、女性の方が皮下脂肪がたまりやすいのです。

皮下脂肪も多すぎるのは良くありませんが…。

まずは内臓脂肪を減らすことが先決です。

 

だから腹囲の基準は、皮下脂肪の薄い男性の方が厳しめになっています。

生活習慣病を予防する為、という観点でのものなのです。

正しい減量の目標設定法

目標となる体重、腹囲は判明したでしょうか。

では、具体的に計画を立てていきましょう。

 

腹囲1cmを減は、体重1kgの減量に相当します。

体重1kgを減量する為に必要なのは、7000kcalのエネルギーです。

これを食事療法運動療法で、消費していくことになります。

 

減量のスピードについてですが…。

速ければ速いほど良い、という訳ではありません。

身体にも精神面にも、負担の無い計画が望ましいです。

『3-6カ月で現在の体重から3%減量することを目標』

として、まずは頑張ってみましょう。

それを標準体重まで、繰り返すことになります。

まとめ

今回は肥満や腹囲高値のときの、目標設定についてお話しました。

痩せなくては、と漠然と考えていても、なかなか実行は困難です。

まずは具体的な目標を計算してみるのもお勧めです。

ゆっくりでも前に進んで行けば、いつかは目標に到達できますよ。

毎日体重をはかることもお勧めですよ!

新型コロナウイルス感染を広げない為に気を付けたいこと

今晩は、花芝です。

今日は新型コロナウイルス関連をやる予定はなかったのですが、webセミナーの内容が勉強になりましたので、特に一般の方へ向けての情報提供をさせていただきます。

 

これは既に様々なメディアなどで伝えられていることですが、文章だと理解しにくい方もいるかと思い、漫画形式にしてみました。(文字多いですが…!)

 

沢山の情報を詰め込みたいところですが、特に必要最低限の、セミナーでも強調されていた点について述べました。

皆さんの理解のお役に立てれば幸いです。

 

新型コロナウイルス感染を広げない為に

風邪かな?と思ったら気を付けたいこと

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新型コロナウイルス感染と風邪は、初期の段階では区別が難しいです。

異なる特徴として、

風邪は数日内に改善傾向を示すことが多いですが、

新型コロナウイルス感染では症状が長引き持続することがあります。

初期の段階で受診していただいても、病院としても診断を付けることが出来ません。

PCR検査も、風邪症状の方全例に行うのは不可能なのが現状です。

(結果自体の信頼性の問題もあります)

 

また、新型コロナウイルス感染か風邪かで言えば、風邪の確率の方がかなり高いと思われますが…。

不用意な病院受診は、逆に新たな感染症を貰うリスクになります。

(勿論、病院も十分に気を付けてはいるのですが)

 

更に、仮に新型コロナウイルス感染だったとしても、軽症の経過をとるのが80%と言われています。

この80%に入るのならば、特別な治療は不要と言うことになります。

早期の病院受診が望ましい方

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勿論、典型的な経過をたどる方ばかりではありません。

初期の段階から症状が重い場合も考えられます。そう言った場合は、医療機関に相談してください。

特に肺炎を起こしているかもしれない激しい呼吸器症状には注意が必要です。

 

また、高齢者の方、基礎疾患のある方などは、

それ以外の方より重症化のリスクが高いので早めの対応が望ましいです。

妊婦の方も、慎重な観察が望ましいと思います。

具体的には発熱などの風邪症状が2日以上続いたら、医療機関に相談しましょう。

 

手順としては、帰国者・接触者相談センター(多くは地域の保健所)に連絡し、

受診する病院などの指示を仰いでください。

また、病院へ受診する際は、該当の病院へも事前に連絡しましょう。

家族に感染を広げない為に

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症状が重くない風邪ならば、4日間は自宅で安静が原則です。

その間は、家族、同居者へ、感染を広げない配慮が必要です。

市販の解熱剤や風邪薬は内服しても構いませんが、

「いつどれだけ何を内服したか」を記録しておくと良いと思います。

まとめ

新型コロナウイルス感染を広げない為に、一般の方へお願いしたいことを纏めさせていただきました。

なお、これは2020年3月5日時点のものです。

変更などがある場合もあります。

情報確認には、厚生労働省のwebサイトが一番確実です。

今日の内容も、もっと詳しく記載されています。

可能であれば確認してみてください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

ピロリ菌治療は怖くない!7日間で8割以上が成功。

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ピロリ菌シリーズ、遂に完結編です。

第1弾は概説

第2弾は検査

最後の第3弾は治療についてお話します。

ピロリ菌の治療って、なんだか大変そうです。

いえいえ、基本は1週間お薬を飲むだけですよ!

今日は ピロリ菌の治療と、治療後のことについてもお話していきますね。

ピロリ菌とは(第1弾)

ピロリ菌とは、胃粘膜に住み着いて胃がんの原因となる微生物です。

日本人の2人に1人が感染していると言われています。

詳しくは、過去の記事をご参照ください。

osibainu.hatenablog.com

ピロリ菌の検査(第2弾)

ピロリ菌の検査には、色々な方法があります。

私のお勧めは、尿素呼気試験または糞便抗原検査です。

それぞれについての細かな特徴は、過去の記事をご参照ください。

osibainu.hatenablog.com

 ピロリ菌の治療対象となる人

何らかの検査でピロリ菌陽性と診断された場合、除菌治療が望ましいです。

ただ、保険適用で治療を行うには以下の条件があります。

ピロリ菌治療の保険適用基準

①ピロリ菌陽性が判明している

②胃潰瘍・十二指腸潰瘍

 胃MALTリンパ腫

 免疫性血小板減少性紫斑病

 早期胃がんに対する治療後

③約6カ月以内に胃カメラで慢性胃炎を確認されている

※①かつ、②または③を満たすこと

上記の②の場合は疾患の治療になりますので、医師の指示に従いましょう。

出来るだけ保険適用で検査・治療を行う為に

平成25年からは、③の慢性胃炎に対しても適用が追加されました。

つまり、特に症状のない胃炎でも、保険でピロリ菌治療が出来るのです。

ここが多くの皆さんに関係してくる部分だと思います。

 

ピロリ菌陽性が判明し、胃カメラの検査も終了している方は問題ないです。

治療の項へ進みましょう。

ただ、まだピロリ菌の検査や胃カメラをしていないという方…。

もしかしたら、順番を変えるだけで治療費が安くなるかもしれません。

下記に示しておきますので、確認してみてください。

ピロリ菌の検査も、胃カメラもしていない(6カ月以内)

ピロリ菌検査にも保険適用基準があります。

それが、実は上記の「ピロリ菌治療の保険適用基準」と同じなのです。

つまり胃カメラで先に慢性胃炎が判明した場合、保険適用でピロリ菌検査を受けることが出来ます。

ちなみに健康診断は、全て自費診療です。

どうせ同じ検査をするなら、急ぐ事情がないのであれば保険適用で安く済ませるというのも有効な選択肢だと思います。

 

健康診断で(最近)胃カメラを受けたことが無い方は、まずは胃カメラを受けてみて、結果次第でピロリ菌検査を検討するのも良いと思います。

ピロリ菌検査で陽性だったが、胃カメラをしていない(6カ月以内)

次に健康診断などでピロリ菌検査を行い陽性判定で、胃カメラを行っていない場合です。

除菌をしようと考えるなら、

①自費診療でピロリ菌治療を受ける

②胃カメラを受けて慢性胃炎の診断を貰い、保険診療でピロリ菌治療する

という二つの選択肢が考えられます。

特別の事情が無い限りは、②をお勧めします。

 

理由は大きく二つあります。

一つは治療費の問題です。

ピロリ菌治療は8割の方は1回で終わりますが、たまに2回以上の治療を要します。

その際、保険適用があるのとないので、差が大きくなります。

もう一つの理由は、医学的なものです。

ピロリ菌陽性が判明しているなら、胃カメラをしておくべきだからです。

胃粘膜をよく観察して、早期胃がんの有無などを確かめるべきです。

 

ピロリ菌陽性で胃カメラがまだの場合は、できるだけ先に胃カメラを受けましょう。

ピロリ菌の検査はしていないが、胃カメラで慢性胃炎は無いと言われた

ピロリ菌検査をしたことがなく、胃カメラで慢性胃炎もない場合…。

ピロリ菌に感染している可能性は低いと考えられます。

ただ、若い方の場合は胃炎所見がまだ確り見えないこともあります。

心配な場合は、自費になりますがピロリ菌検査を受けるのは良いことだと思います。

ピロリ菌治療の実際

では、実際のピロリ菌検査について見ていきましょう。

ピロリ菌治療(一次除菌)

ピロリ菌の治療では、3種類のお薬を1週間内服します。

・胃薬(PPI/プロトンポンプ阻害薬)
・アモキシシリン(抗生剤)
・クラリスロマイシン(抗生剤)

副作用として、下痢・軟便となる方がいらっしゃいます。
ただ、多くの方が治療を最後まで行うことが可能です。
下痢になるときは、整腸剤の使用なども検討されます。

 

この最初の治療を一次除菌と言います。
一次除菌で、80~90%の方が除菌成功します。
除菌成功を確かめるためには、再度ピロリ菌検査が必要です。
この除菌判定は、治療後2-3カ月の時点でおこないます。
治療直後では、検査結果が正しく分からない為です。

ピロリ菌治療(二次除菌・三次以降)

一次除菌が失敗した場合、二次除菌に移ります。
お薬を変えて再び治療を行います。
多くの場合、最初と異なる薬を含んだ3種類を、1週間内服します。
この二次除菌でも、80~90%の方が除菌成功します。

稀ですが、2回目の治療でも失敗してしまうことがあります。
この場合は消化器の専門の先生にお願いして、更に除菌治療を行うことになります。

ピロリ菌除菌後

1年に1回の内視鏡検査

ピロリ菌の治療が終わった後も、定期的な胃カメラの検査が望ましいです。

除菌治療によって胃がんのリスクは下がります。

しかし、その時点までに障害された粘膜は完全には回復しません。

そこを下地にして癌が発生するリスクが、ピロリ菌感染歴のない方よりも高くなります。

具体的には、1年に1回の胃カメラ検査を行っていれば良いでしょう。

再感染は稀

ピロリ菌は治療後の再感染は稀とされています。

ただ、再陽性化と言う現象がみられることがあります。

これは一度検査で陰性が出ていたけれど、実は僅かにピロリ菌が残っていた場合です。

時間をかけて再び増殖したピロリ菌により、検査が陽転化することがあります。

あまり多いケースではないので、気にし過ぎる必要はありません。

心配であれば、少し時間をあけて再検査してみるのも検討します。

しかし、少なくとも毎年ピロリ菌の検査を行う必要はありません。

まとめ

今回はピロリ菌の治療について具体的にお話しました。

検査や治療の保険適用など、些かややこしい部分が多い分野です。

しかし治療そのものは明快で、簡単に受けれるものです。

もし制度で分からないことがあれば、医療機関に相談してみましょう。

健康的な胃を手に入れて、安心して生活していきましょう。

新型コロナウイルス拡大防止の為の電話受診について。

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今晩は、花芝です。

今日は2月28日に厚生労働省から連絡された、

「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて」

についてお話します。

何のことかよく分からないのですが…。

新型コロナウイルス拡大防止のため、一部の方の電話での診療が可能になる仕組みです。

どのような方が対象になるのか、注意点など、お話していきたいと思います。

 

正確には「電話や情報通信機器を用いた診療」ですが、この記事では簡易的に「電話診療」と纏めさせていただきます。

※2「情報通信機器」とはテレビ電話などのことで、文字のみのやりとりは認められません。

新型コロナウイルス拡大防止の為の電話診療とは

2020年2月28日に厚生労働省から、以下の内容の連絡が全国の医療機関へなされました。

・新型コロナウイルス拡大防止の為、可能な限り病院受診は少なくしたい

・既に診断されている慢性疾患に対し、電話や情報通信機器を用いた診察を認める

・上記の患者に対し、これまでも処方されていた慢性疾患治療薬を処方できる

 

新型コロナウイルス拡大防止の為には、その感染源との接触機会を減らすことが重要です。

しかし、病院には体調不良の方が受診します。

感染のリスクは、どうしてもゼロにすることは出来ません。

だから感染予防の観点からは、可能な限り病院受診の機会は減らす方が良いのです。

 

ただ、ここでお伝えしておきたいのは、怖がり過ぎる必要もないと言うことです。

「病院は怖い所だから行きたくない。」

と、心配になる気持ちはとても分かります。

しかし体調が悪い時に我慢しすぎて、他の病気が酷くなってしまっては元も子もありません。

病院受診によるリスクと、その他のリスクを天秤にかけて判断すべきです。

電話診療の対象者

電話診療の対象となるのは、以下の条件を満たす方です。

①すでに診断されている慢性疾患

②病院に定期的な受診歴がある

③病状に変化がない・体調不良が無い

④血液検査などの検査が必要ない

とても分かりやすく言うと、

「今回も同じお薬出しておきますねー。」

と、検査もなく診察が終了する方が対象となります。

 

電話診療だと診察(聴診・触診など)も省略されることになるので、その点が本当はよくないのです。

しかし非常時なので「安定している方はOKにしよう」という方針です。

以下にもう少し詳しく述べていきます。

①すでに診断されている慢性疾患

慢性疾患とは生活習慣病など長期に経過が及ぶ疾患です。

具体的には、高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症…などになります。

他にも、腎臓病や膠原病(リウマチなど)などを含むこともあります。

②病院に定期的な受診歴がある

いわゆるかかりつけの病院でのみ、電話受診が可能です。

1カ月に1回、3カ月に1回など、定期的に一つの病院に通っている方が対象です。

これは、かかりつけ医でなくてはその方の状態の把握が難しいからです。

新規の方の場合は、電話での本人確認が困難という問題もあるかと思います。

③病状に変化がない・体調不良が無い

電話診療は、病状が安定していることが大前提です。

何かお薬の調整が必要だったりする場合は、通常受診が必要です。

また、体調不良のときも、普通に病院を受診しましょう。

④血液検査などの検査が必要ない

電話診療では、基本的に検査を行うことが出来ません。

血液検査やレントゲンなどの検査が必要な場合は、病院受診が必要です。

検査の頻度に関しては、個々の方により異なると思います。

必要か不要か、悩む場合は医師に相談してみてください。

新型コロナウイルス感染が疑われる方について

新型コロナウイルス感染が疑われる方に関しては、電話診療の対象外です。

問診などだけで、診断や重症度の把握が困難だからです。

この場合、直接の対面での診療が必要となります。

 

大前提として、新型コロナウイルス感染が疑われる場合は「帰国者・接触者センター」へ連絡して指示を仰ぎましょう。

 

発熱などの風邪症状は、まずは自宅安静で様子を見ることが望ましいです。

もともと健康な方は4日間、高齢の方や基礎疾患のある方は2日間が目安です。

病院受診で病気を他人に移さない・移されないことを優先しましょう。

ただ、あまりに症状が重いと感じたときには、病院にご連絡ください。

個別のケース毎に、判断が必要な場合があります。

まとめ

今回は病院の電話診療についてお話しました。

基本的には、電話だけで患者さまの状態を把握するのは難しいものです。

しかし、それを感染予防のメリットが上回る場合、電話診療が可能となります。

 

電話診療そのものの是非に関しては、様々な意見があります。

時代や必要に応じて、柔軟な議論と対応が必要となってくるかと思います。

いずれにせよ安心した生活を送れるように、皆さまと一緒に頑張っていきたいです。

正しく選ぼう!ピロリ菌の検査について解説します。

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こんばんは、花芝です。

前回の記事でピロリ菌について概説しました。

今回はピロリ菌第二弾です。

具体的に、どんな検査があるのかを解説していきます。

ピロリ菌の検査は胃カメラを飲まなくてはいけないのですか?

血液検査でもピロリ菌検査が出来ると聞いたことがあるのですが…。

そんな疑問にお答えしつつ、検査や治療の注意点もお話していきます。

 ピロリ菌とは

ピロリ菌は人の胃粘膜に持続感染し、胃がんなどの原因となる微生物です。

日本人では2人に1人という高確率で感染を認めます。

ピロリ菌を正しく検査し治療することは、胃がんの予防につながります。

また、ピロリ菌は人から人(特に親から子)へも感染します。

身近な人へ感染を拡大させない為にも、除菌は有用です。

 

詳しくは前回の記事をご覧ください。

 

osibainu.hatenablog.com

 ピロリ菌の検査

ピロリ菌の検査は沢山の種類があります。

どの検査であっても陽性が出れば、ピロリ菌感染と診断します。

 

ただし、陰性が出ても「ピロリ菌がいない」と判断できない検査もあります。

また、内服中の薬などの影響を受けやすい検査もあります。

つまり自分の状況に合わせて、正しく検査を選んで判断することが大切です。

 

ここからは各検査の特徴について述べていきます。

これまでに受けた、またはこれから受ける検査の参考にして頂ければ幸いです。

尿素呼気試験

ピロリ菌は胃酸の中で生きていくために、まずウレアーゼを作ります。
そして尿素を分解し、アンモニアと二酸化炭素を生成します。
このアンモニアが胃酸バリアとして使われているのです。
余った二酸化炭素はすぐに吸収され、呼気中に排泄されます。

 

難しく感じた方は、以下のことだけ理解してください。
・ピロリ菌は尿素を分解し、胃酸の中和をおこなう力を持っている。
・胃酸中和の結果として、呼気中に二酸化炭素が排出される。

 

この原理を利用しているのが尿素呼気試験です。
これはとても簡単にでき、精度も高い主流の検査です。

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尿素呼気試験の流れ
①試験用の専用パックに息を吹き込みます。
②検査薬を内服し、左側を下にして5分ほど横になります。
③その後、座って15分待ちます。
④新しい試験用の専用パックに息を吹き込みます。

息を吹いて、薬飲んで、待って、息を吹いたら終わりです。
簡単で、身体の負担的にも軽いものだと思います。

 

検査の仕組みについて簡単に説明します。
②の検査薬は、「13C」という目印がついた尿素なのです。
Cは炭素で、二酸化炭素の材料となります。
自然界では99%が12Cという炭素で、13Cは1%程度です。
(ただし、少ないだけで人体には無害です)
もしピロリ菌が胃の中にいた場合、検査薬の中の尿素が分解されます。
そして尿素が分解されると、目印の13Cも切り離されます。
この13Cは、最終的に13Cの目印のついた二酸化炭素となり、呼気中に吐き出されます。
④の検査で呼気中に13Cの二酸化炭素が増えていれば、ピロリ菌陽性となります。

 

これも難しく感じた方は、以下のように考えてください。
・尿素に目印をつけて胃の中へ入れ、ピロリ菌が分解するかを見る検査
・ピロリ菌がいれば尿素に付けた目印が分解され、呼気中に吐き出される

 

この検査の注意点ですが、まず空腹時に行う必要があります。
ピロリ菌と尿素をしっかり反応させるためです。
喫煙も影響がありますので検査前30分は控えましょう。

また、一部の胃薬(特にPPI/プロトンポンプ阻害剤)や抗生剤内服後は、偽陰性となる可能性があります。
これらの薬はピロリ菌を弱らせる効果があります。
そして退治しきれていないのに、検査は陰性と出ることがあるのです。
通常、検査前に2週間程度の休薬期間が必要となります。

ネキシウム、パリエット、タケプロン、タケキャブ…などがPPIです。

意外と内服中の方も多いので、注意しましょう。

迅速ウレアーゼ試験・鏡検法・培養法

3つを纏めましたが、全て胃カメラによる検査です。

基本的には、胃カメラによる胃の一般観察と同時または追加で行われる検査です。

 

具体的には胃粘膜の一部を摘まみとって採取し、直接組織を調べます。

この胃カメラによるピロリ菌検査の根本的な問題が一つあります。

それは、採取した場所にピロリ菌がいるかどうかしか判定できないことです。

胃の組織を取ると言っても、全ての場所から採取して胃を穴だらけには出来ません。

勿論、確率が高そうな場所を狙って検査をするのですが…。

ある場所の組織にピロリ菌がいないと判明しても、別の場所にいる可能性は否定できないのです。

つまり、上記の3つの検査(迅速ウレアーゼ試験・鏡検法・培養法)でピロリ菌がいないと言われたとしても、追加の検査を考慮する必要があります。

胃カメラの検査というと詳しい検査だから安心、と思われがちです。

胃カメラ自体はとても良い検査なのですが、ピロリ菌判定に関しては注意が必要です。

これらの検査は、胃カメラのついでに陽性が出たらラッキー、位の位置付けで考えています。

 

①迅速ウレアーゼ試験

迅速ウレアーゼ試験では、採取した胃の組織を尿素を含む特殊な試験薬に入れます。

この色が変われば、ウレアーゼがある=ピロリ菌がいる、と判定されます。

「迅速」という通り、その場ですぐに結果が分かります。

ただし、尿素呼気試験と同様の理由で、薬の影響を受けます。

②鏡検法

採取した胃の粘膜を、直接顕微鏡で観察します。

ピロリ菌が確認できたら、陽性となります。

③培養法

採取した胃の粘膜をすりつぶして、ピロリ菌の発育環境下で培養します。

ピロリ菌が確認できたら、陽性となります。

抗体測定(血液・尿)

ピロリ菌に感染すると、身体の中でピロリ菌に対する抗体がつくられます。

血液や尿を検査して、この抗体の有無を調べることが出来ます。

抗体があれば、陽性となります。

 

ピロリ菌が治療されて身体からいなくなると、ピロリ菌の抗体はゆっくりと減っていきます。

ただし、この減り方には個人差もあり、完全に消失する訳でもありません。

検査で区別できる程度に抗体が減るまでは、1年程度かかります。

ピロリ菌治療が成功したとしても、抗体の検査は1年間は陽性です。

つまり、ピロリ菌治療が成功したか否かの判定には、この検査は適しません。

糞便中抗原測定

ピロリ菌は胃の中に住み着いていますが、一部は糞便として排出されます。

その中には、生きた菌も死んだ菌もいます。

そのどちらに対しても、ピロリ菌抗体は反応します。

このことを利用して、便中にピロリ菌抗体が反応するものがないかを調べるのがこの検査です。(※)

 

特にデメリットの無い良い検査です。

薬の影響も受けにくく、ピロリ菌治療後も4週間程度あければ正確に判定出来ます。

ただ、検便になりますので、やや抵抗のある方もいらっしゃるかもしれません。

 

※抗体が反応するもののことを、抗原と言います

結局どの検査を選べばよいのか

検査について色々と述べてきましたが、結局、どれを選べば良いのでしょうか。

まず、医療機関によって、行っている検査と行っていない検査があります。

自分の受診する予定の医療機関がある場合は、確認しておきましょう。

また、どの検査も長所短所がありますので「これでなくては駄目」というものはありません。

その上で、私が個人的にお勧めする方法は、以下の通りです。

個人的にお勧めのピロリ菌検査方法

①初めてのピロリ菌検査で、胃薬や抗生剤内服中などでない場合は尿素呼気試験

②初めてのピロリ菌検査で、①以外の場合は糞便中抗原検査

③ピロリ菌治療後の方は尿素呼気試験(内服に注意)か糞便中抗原検査

要するに、尿素呼気試験と糞便中抗原検査のいずれかなら間違いありません。

ただ、その他の検査も場合によっては有用になってきます。

悩む場合は、医療スタッフなどにご相談ください。

また、上記は健診などで検査を選択することを想定しています。

かかりつけの先生などから指示がある場合は、確り相談されると良いでしょう。

まとめ

 今回は、ピロリ菌の検査についてお話しました。

沢山の種類があるピロリ菌の検査ですが、それぞれの特徴が伝われば幸いです。

自分にあった検査を選択していきましょう。

そして検査で陽性が出れば、いよいよ治療になります。

次回はピロリ菌の治療について、お話していきたいと思います。

とっても怖いピロリ菌。正しく知って、胃がん予防。

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皆さん、「ピロリ菌」を御存じでしょうか。

何だか可愛らしい名前ですが、実はとても厄介な困った奴です。

ピロリ菌は人の胃粘膜に住み着いて、様々な病気の原因となるのです。

胃がんに関係すると聞いたことがありますが、他の病気にもなるのですか?

私はピロリ菌陽性と言われましたが、いつの間に感染したのでしょう…。

 今日は「ピロリ菌」第一弾として、感染経路や関連する病気などを解説します。

まずはピロリ菌について正しい知識を身に付けましょう。

 ヘリコバクター・ピロリ菌とは

ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリ菌と言います。

らせん状桿菌、といってこんな形をしています。

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人の胃粘膜に感染・定着するのが特徴です。

胃の中には胃酸という最強のバリアがあります。

だから、通常では微生物が長時間生存できません。

しかしピロリ菌にはウレアーゼを産生し、胃酸を中和する能力があります。

こうして長期間、胃粘膜に住み着いてしまうのがピロリ菌なのです。

 

ちなみに全世界人口では約半数の感染が推定されるそうです。

これは、病気を発生させる細菌としてはトップクラスの多さです。

日本では6000万人~5000万人の感染者がいると言われています。

2人に1人がピロリ菌感染、というくらい多いものなのです。

ピロリ菌の感染経路

ピロリ菌の感染経路は大きく二つが考えられます。

一つが川や井戸水、もう一つが人からの感染です。

川や井戸水

自然界においては、ピロリ菌は主に水中に存在します。

具体的には、川や井戸水の中などです。

水道水には含まれていないので、ご安心ください。

 

上記の理由により、衛生環境の整っていない発展途上国などで感染が多く認められます。

日本も、かつては井戸水を使用する文化がありました。

よって中高年の方の感染率が高くなっています。

逆に、若年層のピロリ菌感染率は低下しています。

人からの感染

ピロリ菌は人から人へも移ります。

主には親から子への感染で、唾液を介在したものが考えられます。

例えば、口移しで食べ物を与えた場合やスプーンの共有などですね。

感染リスクの観点からは、口移しなどは控えた方が良さそうです。

キスは程度次第かと思いますが、避けた方が無難ではあります。

こんな人はピロリ菌に注意

ピロリ菌への注意の仕方としては、「予防」「検査・治療」があります。

予防に関しては、幼少期の子供に対するものが中心です。

検査・治療に関しては全ての方が対象ですが、特に40歳以上の方は早めの対応が良いと考えています。

5歳以下の子供

ピロリ菌感染は、主に5歳以下で起こると言われています。

幼少期は免疫能力も低く、胃酸の力も弱いためだと考えられます。

治療がされない場合、そのまま一生続く持続感染となることが殆どです。

一度ピロリ菌が住み着いてしまうと、大人になって免疫力が上がっても、自力ではピロリ菌を退治しきれないのですね。

つまり、幼少期にピロリ菌に感染しないことがまず大切になります。

40歳以上の方

また、特に注意が必要なのが40歳以上の方です。

既に成人されている方は、過去の環境でピロリ菌感染の有無が決定しています。

先程も述べましたが、衛生環境の改善に伴い、日本でも世代が若くなるにつれてピロリ菌の感染率は低下してきています。

ざっくりとですが、その年代の数字%の感染率くらいだと考えてください。

要するに20代は20%、40代は40%、60代は60%…のピロリ菌感染率となります。

実際は若干ずれるのですが、傾向としてはこの位です。

現実では40代からの感染率が特に上がっていく印象を受けます。

感染率の高い世代ほど、早めに検査して自分の状態を把握した方が良いでしょう。

 

更に、ピロリ菌感染は持続感染です。

だから、感染期間が長くなるほど不利益が大きいです。

重篤な事態を招く前に、早めの対応が望まれます。

結局:一度は皆検査してみよう

ただし、今の日本の10代、20代にもピロリ菌感染者は存在します。

症状は現れないことも多く、考えても感染の有無は分かりません。

以上を考えると、全員、一度はピロリ菌の検査をしても良いのではないかと思います。

 

なお、ピロリ菌の再感染はごくごく稀とされています。

0ではないので、治療終了後にも検査を希望されれば思考します。

しかし、毎年ピロリ菌検査を行う、というのは必要ないかと思います。

ピロリ菌が関係している病気

ピロリ菌は感染していても、多くは症状がありません。

健診などで、突然異常を指摘されて驚く方も多いです。

ただ、症状がなくとも、身体には確りと害を及ぼしています。

そして場合に寄っては、重篤な疾患を引き起こすのです。

萎縮性胃炎

ピロリ菌が関係する最も身近な病気が、萎縮性胃炎です。

長期間ピロリ菌に住み着かれた胃は炎症状態が続き、粘膜が障害されます。

そして上手く回復できずに、胃粘膜が薄くなり萎縮します。

これが萎縮性胃炎と呼ばれる状態です。

初期は範囲が狭く軽度で、症状はないことが多いです。

進行すると胃のほぼ全ての粘膜が萎縮し、胃部不快感や消化不良などの症状を訴える方もいます。

 

この萎縮性胃炎は、胃癌が発生する下地になることが分かっています。

健診では、ピロリ菌感染のサインとして拾い上げることが多いです。

萎縮性胃炎がある=ピロリ菌感染歴がある可能性が高い=注意が必要

と、考えます。

胃カメラで胃粘膜を確認すれば、萎縮性胃炎の有無は判明します。

胃バリウム検査でも進行した萎縮性胃炎は推定可能ですが、精度は胃カメラに劣ります。

だから私は、胃カメラでの健診を強く推奨しています。

過去の記事もご参照ください。

 

osibainu.hatenablog.com

胃がん

 日本人の胃がんの原因の98%がピロリ菌だと言われています。

つまり、ピロリ菌をコントロールできれば多くの胃がんにも対応できます。

菌を治療するだけで癌が防げるのです。

こんなにお得な話は無いと思います。

だから健診でも繰り返し説明しています。

ちなみに、一度胃がんに罹患した方も、ピロリ菌を治療することで再発のリスクを低くすることが出来ます。

 

ただ、注意が必要なことがあります。

ピロリ菌を治療しても胃がんリスクがゼロになる訳ではないことです。

特に高齢の方ほど、リスクが残ることになります。

これは、既に胃粘膜の萎縮が進行してしまった結果だと考えられます。

40歳代までに治療できた方は、概ね安心しても良いかと思います。

 

では、ピロリ菌の治療後はどうすれば良いのでしょうか。

ずばり、年に1回の胃カメラ検査を受けることをお勧めします。

これで早期に胃がんを発見できる確率が上がります。

早期の胃がんならば、内視鏡治療が可能なこともあります。

胃切除などの手術や抗がん剤治療が不要となることも多いです。

 

最後に確率を提示しておきます。

ピロリ菌感染者は、年間0.4%の確率で胃がんになると言われています。

低く感じるかもしれませんが、期間が延びれば確率も積み重なっていきます。

生涯を通しては、1割程度の方が胃がんになると推定されます。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因は主に3つあります。

ピロリ菌感染、NSAIDS(痛み止めなどの薬)、ストレスです。

どれか一つでも起こることがありますし、複合的に原因となることもあります。

ただ、胃潰瘍の方の70%にピロリ菌感染を認めたという報告があります。

リスクとなっていることは間違いありません。

ITP(特発性血小板減少性紫斑病/免疫性血小板減少性紫斑病)

ITPは、血小板に対する自己抗体が原因で血小板数が減少する疾患です。

血小板とは血液成分の一つで、血を止める働きをしています。

その血小板が免疫の異常で減る病気、と考えてください。

ピロリ菌がこの病気の原因となることがあります。

ピロリ菌感染のあるITPの場合、除菌治療で半数の方の血小板数が回復します。

緊急性が低いITPの方は、治療の第一選択はピロリ菌治療です。

胃MALTリンパ腫

リンパ腫というととても怖い病気のように感じる方も多いと思います。

実際怖い病気なのですが、胃MALTリンパ腫の治療の第一選択もピロリ菌治療です。

7割程度の方に、所見の改善を認めます。

ピロリ菌治療だけでリンパ腫が改善するって凄いことだと思います。

ただ、それで必ず治るわけではないので油断は出来ません。

 

胃MALTリンパ腫の90%の方にピロリ菌感染を認めます。

ピロリ菌は胃がんだけでなく、リンパ腫とも深く関連していると言われているのです。

FD(胃の機能性ディスペプシア)

胃の機能性ディスペプシアとは、胃に明らかな異常を認めないのに胃部不快感などの症状を有する病気のことです。

ピロリ菌陽性のFDでは、治療により症状が改善したという報告があります。

ピロリ菌陽性ということは、多くが萎縮性胃炎の方と言うことです。(※)

萎縮性胃炎は無症状の方と有症状の方がいると述べましたが、有症状の萎縮性胃炎はFDと診断すべきなのかもしれません。

煩雑になりましたので簡単にまとめますと、ピロリ菌陽性で胃の不快感がある方は、除菌で症状が改善する可能性があるということです。(※2)

 

※)萎縮性胃炎があってもFDと診断して良いことになっています。

※2)ただし、逆にピロリ菌治療で症状が悪化したという報告もあります。

   これは胃酸分泌の回復に伴う症状と推測されます。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸が食道へ逆流することで起こる食道粘膜の障害です。

ピロリ菌治療により、逆流性食道炎が増悪したという報告があります。

これは、ピロリ菌が除去されたことにより胃の粘膜が回復し、胃酸分泌が活発になったためではないかと考えられます。

ピロリ菌治療は良いことばかりです!と言いたかったのですが…。

デメリットもお伝えしなくてはいけないので、最後に挙げさせていただきました。

ただ、最近の報告では、統計学的にはピロリ菌治療で逆流性食道炎が増えることはないと言われているようです。

しかし、経験上、確かにピロリ除菌後に食道炎になる方はいらっしゃいます。

難しい所ですがこれに関しては、個人差も大きいのではないかと考えています。

ここからは私の考えです。

逆流性食道炎ならば、生活習慣の改善と投薬で治療は可能です。

ですから其れ以外の疾患のリスクを考えれば、逆流性食道炎のリスクを考慮してもピロリ菌治療はすべきだと思います。

平成25年から保険適用拡大になったピロリ菌治療

実際、平成25年よりピロリ菌治療の保険適用が拡大されました。

それまでは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん治療後などの限定された方のみ、保険で除菌治療が出来ました。

その他の方は、治療したい場合は自費診療だったのです。

しかし、平成25年より「ピロリ菌による慢性胃炎」も除菌治療の保険適用となりました。

これは実質、ピロリ菌陽性は全例対象だと考えて良いです。

つまり、ピロリ菌治療の有効性を国も認めているのです。

まとめ

今回はピロリ菌について、全般的に解説しました。

ピロリ菌がどういうものなのか、まずは多くの方に知って頂ければ幸いです。

ピロリ菌は様々な疾患と関連しています。

その中でも特に胃がんの原因となり、早く治療すればするほど恩恵があります。

日本人では50%がピロリ菌感染者です。

決して他人事ではありません。是非、積極的に行動しましょう。

 

具体的には、正しい検査・治療が必要となります。

次回はそういった検査や治療について、説明していきますね。

ピロリ菌の検査・治療はそのメリットに対して、凄く簡単なのです。

 かかりつけの先生や健診医に相談してみるのも、良いと思いますよ。

アルコール消毒の選び方と手洗いのポイントを解説します。

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新型コロナウイルスの感染報告が連日続いていますね。

そして、インフルエンザ感染にもまだまだ注意が必要な季節です。

病気に対しては、何よりもまず予防が第一。

大切なのは、「手洗い」「うがい」「咳エチケット」です。

本日はその中でも手洗いの正しい方法について解説していきます。

正しい手洗いの仕方をマスターしましょう! 

流水と石鹸による「手洗い」と、アルコール消毒の違い

「手洗い」が感染予防には大切だと昔から言われてきました。

しかし、手洗い以上に効果がある手指衛生法があります。

それが手指のアルコール消毒です。

石鹸と流水による「手洗い」よりも手指のアルコール消毒の方が、短時間で効果的に微生物を除去できると判明しています。

流水と石鹸による「手洗い」

石鹸と流水による「手洗い」も、勿論有効な手指衛生法です。

ただ、十分な効果を得るためには60秒程度必要とされています。

随分と長いですね。

ちなみに医療従事者の平均的な手洗い時間は7~10秒のようです。

手洗いに60秒かけるのは、かなり意識しなければ難しいのです。

 

なお、手洗いがアルコール消毒より有効な場面がいくつかあります。

「手洗い」がアルコールよりも有効な場合

①目に見える汚れがあるとき

汚染量が多いと言うことですので、まずは物理的に洗い流す必要があります。

②一部の菌・ウイルスに対して

アルコール消毒が、無効または効果が弱くなる微生物があります。

それが、有芽胞菌とエンベロープを持たないウイルスです。

具体的に挙げると、破傷風菌や、ノロウイルスなどになります。

これらの感染予防を考慮するときには、手洗いの有用性が高まります。

なお、インフルエンザウイルスやコロナウイルスはエンベロープを持つウイルスです。

アルコール消毒は有効ですので、ご安心ください。

アルコール消毒による手指衛生

一方、アルコール消毒の場合は20~30秒必要です。

これでも長いと感じる方は多いかもしれません。

しかし、手洗い60秒よりは、ハードルが低くなるのではないでしょうか。

医療従事者などで頻回に手指衛生が必要な場合は、基本的にはアルコール消毒が推奨されています。

これは業務中に「手洗い」60秒を何度も繰り返すのが現実的ではないからです。

 

また、手荒れの問題もあります。

上記の通り、アルコール消毒より手洗いの方が有効な場面もあるのです。

ならば、「手洗い」とアルコール消毒を両方すれば良いのでは、と考えるのは自然なことです。

しかし頻回な「手洗い」とアルコール消毒の併用は、手荒れを招きやすくなります。

医療従事者の手は患者さまに直接触れますので、荒れるのは感染対策の面でも望ましくありません。

結局:どちらもすれば良い

では、一般の方の感染予防はどうすれば良いのでしょうか。

一般の方の手指衛生のタイミングは、外出後、食事前、など回数が限られています。

医療従事者のように、1日に何十回も手指衛生の機会がある方は少ないと思います。

ですから、可能であれば「手洗い」「アルコール消毒」どちらも行うことを推奨します。

いやいや、私は医療従事者ではないですが、頻回に手を奇麗にしたいです!

その場合は、アルコール消毒を平時は使用し、ここぞという時に「手洗い」とアルコール消毒の併用をするのが良いでしょう。

アルコール消毒液とは

店頭にはさまざまなアルコール消毒液が並んでいると思います。

大切なのは、成分と濃度です。

大きく分けて「エタノール」「イソプロパノール」があります。

消毒用エタノール(70-80%)

エタノールは最も一般的なアルコール消毒液の成分です。

そして、消毒用エタノールの濃度は70-80%になります。

これより濃くても薄くても、微生物の除去効果は落ちます。

ちなみに、無水エタノールというのは純度の非常に高いエタノールです。

99%以上の濃度がありますが、すぐに蒸発してしまい手指消毒には不向きです。

また、手も荒れると思います。

イソプロパノール(70%)

イソプロパノールという成分のアルコール消毒液も販売されています。

50%と70%のものが多いですが、70%の方が消毒効果は高いです。


エタノールよりも安価なことが多いです。

ただ、一部の微生物に対して消毒効果が弱いです。
具体的には、エンベロープを持たないウイルスに対してです。
一般細菌やインフルエンザウイルス、コロナウイルスへの効果はエタノールとほぼ同様だと考えられます。

また、イソプロパノールはエタノールよりも手が荒れやすいです。

総合して、エタノールの使用が勧められます。

正しい手指衛生の方法、ポイント

「手洗い」と「アルコール消毒」を両方行うとして、ポイントを纏めました。

①指輪や時計は外す。手首も洗えるように袖を捲る。

②石鹸と流水で確りと手洗い。目標は60秒以上。

③手洗い後は、ペーパータオルなどで手を乾かす。

④消毒用エタノールを十分量使用して手指に擦りこむ。目標20秒以上。

⑤必要であればハンドクリームなどでケアを行う

各項目を、一つずつ見ていきます。

①指輪や時計は外す。手首も洗えるように袖を捲る。

 手洗いは爪の間から手首までが基本です。

邪魔になるものは、事前に外しておきましょう。

②石鹸と流水で確りと手洗い。目標は60秒以上。

手指を流水で濡らして、石鹸を適量とります。

手の平、手の甲、指の間、指先(爪の間)、手首を順に洗います。

60秒かけようと思うと、かなり隅々まで洗わないと時間が余ってしまう筈です。

洗い終わったら、流水でよくすすぎましょう。

③手洗い後は、ペーパータオルなどで手を乾かす。

手洗い後、アルコール消毒に移る前に手をよく乾かします。

濡れた手のままでアルコール消毒をしてはいけません。

アルコール濃度が変わって、消毒効果が落ちてしまいます。

ペーパータオルや清潔なタオルなどで、確り手を乾かしましょう。

④消毒用エタノールを十分量使用して手指に擦りこむ。目標20秒以上。

消毒用エタノールをたっぷりと手の平にとります。

適量は手の大きさ次第ですが、20秒間で漸く乾く位の量が望ましいです。

早く乾き過ぎてしまう時は、十分量ではない可能性が高いです。

あとは手洗いのときを思い出して、隅々まで擦りこんでいきましょう。

⑤必要であればハンドクリームなどでケアを行う

個人差がありますが、手指衛生をしていると手荒れは本当によく起こります。

頻回にしていなくても、手が荒れやすい方もいるでしょう。

手荒れが原因で、手洗いが出来なくなってしまっては大変です。

こまめにケアを行っていきましょう。

 

手荒れの予防は、一番は保湿です。

手洗いやアルコール消毒後に、ハンドクリームなどで保湿をおこないます。

保湿剤入りのアルコール消毒液の使用も選択肢に入ります。

まとめ

 今回は手洗い、アルコール消毒についてお話させて頂きました。

手指衛生は一番身近で、簡単にできる感染予防です。

新型コロナウイルス感染対策は勿論ですが、その他の病気にも有効です。

ぜひ、この身近な感染対策を活用して、健康な生活を送ってくださいね。

少しの工夫で効果が高まるのが手指衛生です。日頃から実践してみてくださいね。